小中高校における金銭教育導入への提言

事務所内を整理していたら、懐かしい文書が出てきました。
作成したのは、5年前くらい(2012年)でしょうか。
自分の備忘記録としてここに記しておこうと思います。
なお、データーは最新のものに更新せず、あえて当時のものをそのまま載せました。

金銭教育の目的

終身雇用制度崩壊とともに、自己責任時代が到来しました。
かつては国、企業が担ってくれた生活設計という重要な部分が個人の自己責任へと移行しています。
退職後の生活設計の中心となる年金だけでは生活が難しくなっています。
そのため、退職前の資産形成、退職後の生活設計の重要性が増しています。

退職金に関しても、今後の運用は個人で行うようになります。
(※最近は良き聞かれるようになってきましたね。iDeCo)

自分のライフプランにあわせて金融商品の選択、運用を行っていく必要があるのです。
生活設計能力の違いで人生に大きな違いが出る時代。
それが、自己責任時代です。

お金の話はタブーとされてきた日本の習慣の中で、マネースキルを身に付けることは難しいかもしれません。
しかし、生活費の大部分を賄えて来た時代から、なんとか賄っていく時代への変化の対応は必須です。

知らなかったでは済まされないのがマネー知識。
膨大な情報の中でどの知識を取捨選択していく能力を身に付けていくことも大切です。

金銭教育の目的まとめ

・自己責任時代を生き抜く力を身に付ける
・生活設計力の必要性
・情報化社会で情報の取捨選択の重要性を学ぶ

金銭教育の必要性を物語る背景
お金の知識がないために起る問題があります。
例えば次のようなものです。

・経済的事情による自殺
・詐欺
・自己破産
・多重債務
・貧困
・教育格差

消費者金融や信販会社から借金を重ね、返済困難になる多重債務者は相当数いると言われています。
(※現在では総量規制があるため、年収の1/3までが融資の上限となります。銀行のキャッシングには総量規制がかかっていないという新たな問題が浮上しています)

クレジットカード利用による多重債務者の増加には、次のような問題があります。

・カード発行のハードルが低い
・キャッシングの安易な利用
・クレジットの仕組みの未理解

クレジットカードでの買い物を主としている人でも、クレジットカードは三者間での契約であるなどの仕組みを理解していません。
返済が滞ったら、商品を購入したお店から催促されると思っていたりします。
もちろん、リボの仕組みも理解していません。

わからないまま便利なアイテムを利用した代償は大きいものがあります。

クレジットカードが多重債務の入り口になっている問題点はよくあげられます。
多額の借金や失業など経済生活問題を理由にした自殺は平成14年~年間約8,000人だそうです。
(出典:警視庁統計)

他にもこんな問題点が。

非正規雇用が増えていることも、見逃せません。
低収入層の増加による公的支出の増加、公的支援の縮小など負のスパイラルの増加問題です。
収入の不安定、支出のコントロール能力の欠落、労働意欲の低下などはその状態から抜け出すことが困難となるため、次世代を巻き込む恐れがあります。
簡単に言えば、親の貧困が子の貧困につながるということです。
こういった状況下での生活は、暴力、低学歴、犯罪の増加といった問題も抱えます。

高齢者における金融リテラシー欠如によるトラブルの増加

高齢者のマネートラブルが増加しています。

・振りこめ詐欺
・おれおれ詐欺
・還付金詐欺
・送りつけ商法
・未公開株による被害

現在の高齢者世代は、もともとマネー知識を持ち合わせていません。
特に必要なかったからです。

銀行にお金を預けておけば高金利が付いた時代を過ごしています。
国や企業が年金や退職金などで生活設計を特に考えなくても生涯過ごせる道を作ってくれました。
高齢者のマネートラブルの増加は、恒例による判断能力低下もあるでしょう。
それに加えて、マネー知識不足によることも否定はできません。

無料=素晴らしいこと。いい人。
このような図式を抱いている人は少なくありません。
そのため、無料開催で集客を受け高額商品の購入に上手く誘導されてしまいます。

このようなリスクを回避するには、マネー知識を身に付けるしかありません。
例えば、販売側の見せる情報を判断できる能力を養うことなどです。

個人のマネーマネジメント能力が問われる時代へ

金銭教育により身に付けてほしい能力は次の通りです。

・人生の計画
・目標達成のプロセス
・生きていく力の構築

金銭教育を行うことにより、将来の住宅取得、教育費の確保、老後資金の準備など計画をもって行うことができるようになります。
どのイベントを行い、行わないかの選択により生活の変化を認識することができます。

仮に、車を購入するか否か。
現金で購入するのか否か。

その場合の家計支出をイメージすることにより、マネーマネジメント能力のスキルアップにつながります。

お金は有限であること。
収入分までしか支出できないとしっかり認識し、支出の計画性につなげることができます。
皆が持っているから持つなどの他者基準から変化させることが大事です。
自分の収入・支出から判断した自分の価値観による支出の判断。

これは、日々の生活の中で積み重ねトレーニングしていくことにより身に付いてきます。
限られた収入の中での支出ですから、何かを買ったら何かは買えない。という現実と向き合うこと。

収入は有限ですが、欲望は無限です。
自分の価値観によるお金の使い方を身に付けていくことが大切になります。

金銭教育における年齢別問題点 小学生
大きく3つに問題点を分類しました。
収入の問題・・・労働により収入を得ることがわかりにくい
支出の問題・・お金の使い方を学ぶ場の減少
収支の問題・・金銭教育題材としておこづかいの機能が不能
収入に関する問題から見ていきましょう。
かつて給料は現金支給でした。
大人が労働の対価として収入を得ることを目の当たりにしたのが給料日。
現在ではほとんどの会社が口座振り込みを利用しているのではないでしょうか。
給料日に親が現金を持ち帰るシーンを目にすることがなくなりました。
その結果、仕事をして収入を得るということが理解しづらくなっています。
・お金は湧いてくる
・銀行ATMに行けばお金は出てくる
・おうちにはいくらでもお金がある
こんな風に思っている子が少なくありません。
次に、支出の問題です。
駄菓子屋さんが激減し、子供が自分でお金の使い方を学ぶ場がなくなってしまいました。
お小遣いで購入できる単価の小さな商品と接する機会がないのです。
コンビニやスーパーなどの商品は子供にとって高額です。
身の丈以上の買い物を小さなころから繰り返し体験学習してしまう環境下にいます。
(親の監視下以外で)お金を使う機会は子供にとって貴重です。
これを買ったら、あれが買えない。
限られたお金での選択。
これを希少性と選択といいます。
何度も繰り返し自分で考えていかなければ、お金に対する判断力を養うことは難しいでしょう。
収支のバランスを考える大事な練習教材として上手く活用したいのが、お小遣いです。
金銭教育の目的を持ってお小遣いをあげるならば、親が筋の通った姿勢を見せなければなりません。
例えば、このような一貫性のない行動は、子供のマネーレッスンの大きな妨げになります。
・不足した都度補充する
・親の機嫌のいい時に急にお金をあげる
・臨時に褒美としてあげる

金銭教育の問題点 中学生
問題点を3つに分類しました。
収入の問題・・・収入の高低と学歴の問題の不理解
支出の問題・・・NEEDとWANTの不理解
収支の問題・・・望む生活と収入・支出の関係の不理解
中学生にとって、まだまだ世の中の仕組みは未知なもののようです。
高級車に乗って、いい暮らしがしたい。
お金持ちになる。
など、夢は大きいのですが、その夢を実現するためにはどうすればいいのか?がすっぽりと抜け落ちています。
望むような生活を得るためには、
・どの程度の収入が必要か
・そのためにはどのような進路選択をしていくのか
・今からできることは何か
具体的に考えていくことが生活設計のベースになります。
生活設計を考えるためには、収入を考えていく必要があります。
その収入を得るためには、一般的に高学歴であるほど生涯賃金が高いというデーターがあります。
最終学歴別生涯賃金
中学校卒業
男性 1億9,000万円
女性 1億3,000万円
高校卒業
2億1,000万円
1億5,000万円
大学・大学院卒業
2億7,000万円
2億2,000万円
※元データーが2008年であまりにも古すぎましたので、2016年に差し替えました。
出典:労働政策研究所 研修機構ユースフル労働統計2016
望む生活を手に入れるためには、いまという時をどう使うのか考えていくことになります。
授業中に寝ていて、勉強が分からない。
部活に入らず、放課後はTV・漫画・ゲームに講じて過ごす。
などの生活が将来の自分の生活を設計していることにつながるイメージを持つことが大切になってくるのではないでしょうか。

金銭教育の問題点 高校生
考えていきたいことを3つに大別しました。
・望む生活と収入・支出のバランス
・情報の取捨選択
・消費生活とカードとの付き合い方
現在の生活と将来の生活は当然ながら繋がっています。
アルバイトを始めたりして、社会との接点が増えてくる高校生に知っておいて欲しいマネー知識は多くなります。
その中でも、お金の使いかたとバランスの関係は考えていきたいところです。
バイト代でパチンコ、喫煙、飲酒なんてことは論外です。
時間という資源を使って得たお金の使い道を丁寧に考えていく習慣を身に付けていきたいところです。
さもなくば、労働に費やした時間を、学習の時間にあてたほうが将来的には有効性が高くなります。
時間という貴重な資源を、目先の欲望の為に浪費する癖を付けないことは大事です。
高校を卒業すると、クレジットカードを持つケースも多くなるでしょう。
無計画に欲望を満たすお金の使い方に慣れ親しんでいると、クレジットカードが大変危険なアイテムになりえます。
気軽なカード利用による多重債務への危険性の認識は大切です。
※自己破産申立件数 平成19年148,000件超(出典:最高裁判所)
情報があふれかえる社会の中で、情報を取捨選択する能力を高めることは自己防衛につながります。
そのためには、一歩進んで深く考えてみることです。
・情報源は確かなのか
・誰が何のためにリークした情報なのか
・その情報は安全のか
大学生によるネズミ講による商材販売が問題となりましたが、マネーリテラシーの欠如によるものと言えるでしょう。
大人の目が届く高校生のうちに、社会に出て困らないマネーリテラシーの形成を始めていきたいところです。
自分の人生をよりよくするための人生計画にマネー計画は欠かせません。
生きていくこととお金のことは切り離せない。
にも、関わらず、お金のことはよく分からないという人が多いのも事実です。
このようなスキルは一朝一夕には身に付くものではありません。
なるべく早く生活に取り入れて学んでいく必要があります。